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小説「そして、バトンは渡された」家族の形

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本日は「瀬尾まいこ」さんの小説「そして、バトンは渡された」を紹介します。

この小説のテーマは、家族の形です。

17歳までの間に4回も親が変わった主人公の成長を描いた物語です。

あくまで小説であり、全ての家族や親が登場人物のように良い人であるとは言えないかもしれません。

でも、希望を持てる内容でした。

1.著者情報と本の概要

上述の通り「そして、バトンは渡された」の著者は「瀬尾まいこ」さんです。

坊ちゃん文学賞大賞吉川英治文学新人賞坪田譲治文学賞なども受賞されています。

この「そして、バトンを渡された」では「本屋大賞」も受賞されています。

残念ながら私は、瀬尾さんの他の小説を読んだことがありません。

しかし温かい小説を書く方なのだなぁ、と思いました。

あらすじを紹介します。

主人公は高校生の「森宮優子」です。

彼女は17歳までの人生の間に、4回も親が変わっています。

しかしそのどの親にも愛を注がれて育ちました

その様子を回想を交えながらお話しが進んで行きます

このお話しは2部構成になっており、第1部は高校生の姿、第2部は大人の姿を描き出しています。

主人公と共に、自分の家族の在り方を考えさえられる、そのような作品でした。

2-1.究極の選択

友達は、またできる。だけど、私と血のつながった、赤ん坊だった私を抱いてくれた父親を手に入れることは、二度とできない。

「そして、バトンは渡された」P.99 L.11

小学生の優子に迫られた究極の選択があります。

それは血がつながった父がブラジルに転勤になるにつれて、義母について日本に残るか、実父ブラジルに行くかという選択でした。

そのときに優子は、友達と離れたくなくて、義母と日本にいる事を選択します。

それを後悔した言葉が、上の言葉になります。

私も社会に出てから外から学校を眺めた時に、なぜ幼い頃の私はあそこまで友達の存在を重視していたのかと不思議になることがあります。

友達がいるから、この部活にするとか、グループに入りたいとか。

今から思えばそれほど重要な事には思えません。

しかしその時には、確かに大切でした。

「友達は、またできる。」この言葉に何だか揺さぶられました

2-2.大事なもの

今より大事にすべき過去など一つもないのだから。

「そして、バトンは渡された」P.311 L.11

ブラジルに行った父に、何度も優子は手紙を書きました。

しかし返信は一度も来ませんでした。

その事を優子が思い出しながら、前を向くシーンの言葉です。

言われてみれば、その通りですよね。

過去をいくら反芻したところで、現在や未来は変えられません。

現在しか、我々は干渉できないのです。

頭ではわかっていても、口に出したり行動に移したりすることは、難しいですね。

これもまた、私に響く言葉でした。

2-3.本当の幸せ

本当に幸せなのは、誰かと共に喜びを紡いでいる時じゃない。自分の知らない大きな未来へとバトンを渡す時だ。

「そして、バトンは渡された」p.372 L.10

この言葉は、この小説の最後に出てきます。

恐らくこの小説における大きなテーマのひとつでしょう。

ここでいうバトンとは、優子のことを指しています。

あまり詳しく書くとネタバレとなってしまうので難しい所ですが、優子の旅立ちを応援する気持ちが描かれています。

当然、私はまだバトンを渡す側にはいません。

それどころか、バトンとして渡されてもいません。

でも、親の気持ちってこのような感じなのかな、と少し感じました。

3.まとめ

この小説を読んで、親と血がつながっていることで見えなくなっているものを感じる事が出来ました。

例え血がつながっていなくても、愛される子どもがいます。

私も親と家族の在り方を考える良いきっかけになりました。

厚い小説ですが、一読の価値アリかと思います。

ぜひ、読んでみて下さいね。

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