※このページは創作物です。実際の人物とは関わりありません。
私の好いたひとは、不思議な人でした。
明るく晴れた空に残った月を見上げながら、彼は「あの月の中にはカラスが捕えられているのだよ」と言いました。
彼は続けました。「有明の月は、皆が気が付かない所で明かりが消えて、点滅しているんだよ。そしてたまたまそこを通りかかったカラスを捕えてしまうのさ」。
それだけ言うと、彼は一歩踏み出し、歩き始めました。私は不可思議な気持ちを抱えたまま、彼の後ろを一歩下がって付いて行くのでした。
今朝、空を見上げていて「あぁ、明るいのに月が見えるなぁ」と思い、ふと点滅したように見間違えて、このエピソードを綴ってみました。カラスはたまたま鳴いたので。もうひとつ要素があれば、オリジナル三題噺にできたのに、残念です。
さて、「明るい空の月」をかっこよく表現したくて、何と呼ぶのかネットで調べてみました。結果は、結論わからん!でした。何月かとか、月齢がいくつかによって、全て月の名前が違ったのです。このエピソードでは、「有明の月」としました。一番一般的な気がしたからです。でも、これは和歌の表現で、恋文的な意味が含まれてしまうようですね。ちょっと今回のエピソードとは、合わなかったかも。
ちなみに、月が点滅するイメージは、恐らく私が好きな「テガミバチ」という漫画(アニメ)から来ている気がしました。テガミバチのモチーフは人工太陽だけれど、月みたいなものよね。