倫理に興味を持ち始めた私は図書館で倫理の棚の前でフラフラとしていました。その際に見つけた本がこの一冊です。「14歳からのライフ・レッスン 善悪ってなに? 働くってどんなこと?」です。14歳にもわかりやすいように倫理が説明されているということで、引用を使いながら纏めたいと思います。
ちなみにこの本の書き方としては問答の様子で進んでいきます。若い子が手に取りやすいようにとの配慮だと思いますが、突然口語の文章が入ってくるため、多少の読みづらさを感じました。また、若い子役の言葉遣いが乱暴であることが気になりました。
今回の記事でまとめる部分は用語の定義と第7章の「働くってなんだろう?」に限ります。
目次
1.用語の定義
さて、倫理学の本ですから、まずは「倫理」そのもの定義を見て行きましょう。この本での定義はこちらです。
「倫理」とは、「正しい」とか「よい」とか「やるべきだ」とか信じられていることについて、なぜそう信じられているのか、それはほんとに「正しい」のか、「よい」ことなのか、「よい」とはどういう意味で「よい」のか、などについて、いつも考え直そうとする態度のこと 22頁5-8行
倫理学といえば何が正しいのか、善であるのかを議論するものだというイメージが私にはありました。しかしそれだけでなく、自分が信じている「正しい」さえも疑って考えることが倫理であるとすると、なかなかに難しいものがあります。何だか社会の授業みたいだなぁと感じる定義でした。
では、善悪の定義を見て行きましょう。「善」の定義は言葉を変えて様々な表現で書かれていました。その中で特にわかりやすいものを引用します。
「善」というのは、この社会の共有財産を利用しながら、社会の約束事や慣習に毎日従っている、そして昔の人たちが苦労してつくりあげてきたこの共有財産をなくさないように気をつける、ということ 46頁9-11行
私たちが生まれたとき、既にそこには社会があったはずです。法律を守り、一生懸命働く家族がいるはずです。そのこと自体が既に善であるとこの本ではされています。いつも通りに会社に行って帰ってくることができる。そんな平和な社会を後世に伝えていくことが私たちが出来る善なのです。
逆に「悪」の定義は簡単にしてありました。
慣習的に「善」とされていることに逆らうことであれば、その社会の範囲内では何でも「悪」と見なされる 54頁3-4行
つまり、「善」ではない行いが悪だということですね。学校に通う子どもを誘拐する、などが平和な社会を壊す行動の例として挙げられるでしょうか。法律を守ることは「善」ですから、法律を破ることは「悪」ですね。
また、「道徳」という言葉の定義が「倫理」とは別にされています。道徳のお話は本を通して色んな箇所で少しずつでてきます。その中でわかりやすい表現は、次の一文かと思います。
道徳は、そういう「心」の作用が無秩序にもつれていく可能性にたいして、人類が自分で歯止めを与えようとしてきた努力の跡 83頁10-11行
善悪を考えるときに、心の作用のままに発想をしていくとだんだん善と悪の区別がつかない世界に入っていきます。それにブレーキをかけてくれるものが道徳ということですね。
以上が言葉の定義になります。
「倫理」とは善悪を疑って考えること。「善」とは現在の社会をよりよくしながら後世に伝えていくこと。「悪」とは善でないこと。「道徳」とは心の作用にブレーキをかける努力のこと。
このようにまとめらるかなと思います。
2.「働く」ってなんだろう?
私自身が現在「働くことってなんだろう?」という疑問を持っている最中であります。その為ここでまとめてみることにしました。結論から書くと、働くことは次の文に纏められています。
働くことは、責任を果たすことを通して自由を実感するための最も重要な条件の一つ 191頁2-3行
つまり、働くことによって私たちは自由を感じることができるということですね。確かに働かなければお金も手に入らないし、それ以外の誇りのようなものも手に入らないかもしれません。
この章では、働くことの意味を「矜持」という発想を使って説明しています。
(矜持=)人同士かかわりあう世界で誇りを保てること 181頁2-3行
世界で誇りを保つためには条件があります。
(矜持の条件=)自分が周囲の人から必要とされる存在であると確信できる 181頁12-13行
この矜持の条件はなかなか難しいのではないでしょうか?会社で働いていてお金を受け取っていても、仕事がうまくいかなくて落ちこむこともあります。自分が周囲の人から必要とされる存在であると確信するためには、「ありがとう」の言葉を言ってもらう等が必要なのでしょうか。しかしそうすると他者承認となってしまって苦しい世界に入ってしまいます。
あくまで自分が確信していれば良いのですから、過信であったとしても大丈夫ということなのでしょうか?もっと調べる必要がここはありそうですね。また、この定義の中の「必要とされる存在」という単語の定義も別にされています。
(必要とされる存在=)「取り替えのきかない個人として気にかけられる存在」(中略)「まともな社会人一般として相手にしてもらえる存在」 181頁14-16行
必要とされる存在の定義は二つ出てきました。主にこれは前者が「家事育児などの金銭が発生しない仕事」、後者が「会社で働くなど金銭が発生する仕事」についている人への説明だと思ってもらえればよいかと思います。
これらの定義をまとめると、
自分が周囲から「取り替えのきかない個人として気にかけられる存在」あるいは「まともな社会人一般として相手にしてもらえる存在」であることを確信することによって、この世界で誇りを保てるようになる。
ということになります。今までの定義を繋げただけですが。
給料という目に見えるものが手に入る「まともな社会人一般として相手にしてもらえる存在」の方が難易度が低いのでしょうね。アルバイトでも良い訳ですし。
3.まとめ
言葉の定義について:「倫理」とは善悪を疑って考えること。「善」とは現在の社会をよりよくしながら後世に伝えていくこと。「悪」とは善でないこと。「道徳」とは心の作用にブレーキをかける努力のこと。
働くことの意義について:自分が周囲から「取り替えのきかない個人として気にかけられる存在」あるいは「まともな社会人一般として相手にしてもらえる存在」であることを確信することによって、この世界で誇りを保てるようになる。
今回まとめた部分以外にも、法律や愛について扱った章もありました。14歳向けの本なので、その年ごろの子どもが巻き込まれそうな犯罪についても触れられています。易しい言葉を使っている部分が多いので、是非14歳のうちに読んでみて欲しいなと思います。
以上が「14歳からのライフ・レッスン 善悪ってなに? 働くってどんなこと?」のレビューでした。