仕事を始めてから忙しくて、大好きだった図書館に来るのも久しぶりだ。
私は図書館の中に入って行った。
静かな空間。ときどき響く子どもの声。
いいなぁ。好きだなぁ。
適当にふらふらと棚を行ったり来たりしながら好きな本を探していく。
「ビール大全」という本が気になった。
大学時代に仲良くしてくれた人がビールが好きだったけれど、こういう本に興味があるのかしら?
そのように考えながら、貸出手続きをするために受付に向かう。
受付に本を出すと、図書館カードの有効期限が切れていると言われた。
そうだったか。保険証を手渡すと、これだけでは不十分だという。
さらに、その保険証に県外の住所が書かれていたのを忘れていた。
そう、私は地元を一旦離れている。
今の住所は県外なのだ。休職して地元に帰ってきているだけなので、住所等はそのままだ。
私は地元の市民権を失効している。
それをはっきりと図書館員さんに言われたときに、私は動揺した。
地元に帰ってきてどうしてお前はこの市の市民ではないと言われなければならないのか。
私は大学時代に司書資格課程をとっていた関係で、「失効」という単語は使ってはならないと習った。
その理由を私自身が体験してしまったわけだ。
しかし優しい図書館員さんが一回だけだと本を貸し出してくれた。
私の帰る場所はどんどんなくなってしまう。
そんなことを考えながら重い「ビール大全」を持ちながら帰る私だった。
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本日は三題噺です。本日のお題は「ビール」「保険証」「図書館」でした。
今回のお話は実体験が元になっています。「ビール大全」は架空ですが(笑)。
地元を離れると私の帰る場所が無くなってしまうのだと、悲しくなってしまったエピソードでした。
祖父母の家も解体され、刻一刻と時間が進んで行くことを体感します。
私が若くいられるのも一体いつまでなのか。
とりあえずはやりたいことを素直にやることから始めたいとおもいます。