本日は、本を読み終わりましたので、その本についてまとめます。
目次
1.本の概要と著者情報
今回紹介する本は「利己的なサル、他人を思いやるサル」という本で、動物学者の「フランス・ドゥ・ヴァール」という方が書きました。
サブタイトルとして「モラルはなぜ生まれたのか」と付記してあります。
題名からも想像できるように、サルのモラルと人間のモラルを比較することで、より人間独自のモラルの理解を深めようという本です。
私は生物学には明るくありませんが、サルといっても様々な種類がいます。
人間に最も近い種は、チンパンジーであるらしいです。
チンパンジーとの比較はもちろん、それ以前の種とも比較することでモラルがどう形成されてきたかを考えて行きます。
この本の特徴として、著者の記述が少ない点が挙げられます。
この本の著者自身の実験や観察ももちろん使われていますが、多くは別の研究者の情報を引用しています。
また、著者の本は、この本が初めてではないので、より古い本についても芋づる式に読む必要があるかもしれません。
2.人間の道徳性は独自のものなのか?
さて、さっそく分析に入っていきましょう。
この本の中に書かれている、この本のテーマをまずは引用します。
人間の道徳性は、霊長類に広く見られる社会統合のパターン、個体が群れになじむために必要な適合行動の延長かもしれない。もしそうなら、本書は社会環境が個人の行動をどう形作り、制限するかという大きなテーマを扱うことになる。
「利己的なサル、他人を思いやるサル」p.19 ll.5-7
引用を読んだだけでは、少し難しいですね。
この本を読み終わった後に振り返れば、ふんふんと理解できるかもしれませんが、初めての方が読んでもなんのことやらだと思います。
霊長類とは、人間を含むサルの総称です。
人間の道徳性とサルの道徳性を比較した時に、人間独自の部分は比較的少なく、サルと共通の部分も多くあるのではないかと著者は考えています。
その為、この引用の部分にあるように、人間の道徳性についても独自のものではなく、多くはサルの時代からの延長なのではないか、引用の前半はこのように説明できるのではないかと思います。
では、引用の後半はどうなのか。
人間の道徳性がサルの時代のものからであるなら、それは動物的なものと言えます。
遺伝なのかもしれないし、社会的動物としての本能なのかもしれません。
もし人間の道徳性が遺伝や本能であるなら、個人の行動を規制するように社会的圧力がかかるのではないか。
この本は、そのように大きな主題に関しても、触れていくことになるという宣言であると私は受け取りました。
3.動物に道徳性はあるか
最も核心に近い部分からまとめて行きます。
そう、そもそも動物に道徳性はあるのか。
あるとしたら、それは人間の道徳性の原型と呼べるのか。
まずはこれを示さなければ、サルと人間の比較になりません。
以下にこの本の結論部分を引用します。
人間の能力をもっと細かく分けてみれば、動物にも見いだすことができるのだ。
「利己的なサル、他人を思いやるサル」p.353 l.11
人間は、確かに高度に発達した動物です。
しかし複雑に見えるものも、実はひとつひとつの現象は単純であることもあります。
解きほぐしていけば、共通点が見つかるということです。
もちろん、ここで扱っているのは、サルを含む動物であり、範囲は非常に広いです。
イヌなども含んでいるということですね。
イヌに道徳性そのものをはっきり確認することは難しいです。
しかしイヌだって叱られれば反省します。
そういう意味で、人間も反省するので共通点といえます。
しかしイヌが、本当に自分の行為を反省しているのかというと別です。
イヌが認識しているのは「部屋の中がめちゃめちゃになった時に主人が帰ると叱られる」ということであり、「自分が部屋をめちゃめちゃにしたから叱られている」とは認識していないのです。
飼い主は、イヌを叱り、くぅーんと反省するので許してしまいますが、また同じことが起こる原因はここにあります。
人間の場合であれば、言葉も通じますし、自分がめちゃめちゃにしたことが悪いとすぐに理解できるはずですよね。
だから人間のレベルでイヌ(動物)が理解しているとは言えないけれど、イヌのレベルの理解がなければ人間のレベルまで発達しない、という意味で、道徳性は共通点があると言えます。
4.道徳的態度を身に付けるには
さて、ここで話は少し飛んで、では人間における道徳性を身に付けるにはどうすればよいかについて、見て行きましょう。
以下にこの本の訳者あとがきの一部を引用します。
道徳的態度とは、「黄金律」を実行すること、つまり自分が他人にしてもらいたいことを、自分が他人に対しておこなうことである。
「利己的なサル、他人を思いやるサル」p.364 ll.2-3
この一文が一番わかりやすいと思いましたので、本文ではなく訳者あとがきから引用しました。
もうそのままですね「隣人愛」のようなものです。
道徳的態度とは、人間がとるべき道徳的な態度のことで、それすなわち自分がしてほしいことを他人にすることである、ということですね。
この記事では冗長になるので割愛しましたが、この本の中には様々な動物の理解の限界が書かれています。
例えば、私たち人間は当然のように食べ物を分け合いますが、それはほんの一部の種に限った事です。
それ以外の動物たちは、例え協力して捕えた肉であっても、全員で奪い合います。
それ以外の動物たちに、食べ物を分け合うなどという発想はありません。
人間は社会的動物であり、食べ物を仲間に分け与えてお礼を言われて喜べる動物です。
より人間らしく、高度な動物であるようにふるまうには、他人にしてほしいことを自分から他人にする必要があるわけですね。
5.まとめ
今回は「利己的なサル、他人を思いやるサル」という本の内容をまとめました。
人間の道徳性は、動物のそれの延長なのか?
動物の道徳性とは?
人間がより道徳的にふるまうには?
結論としては「人間の道徳性は動物のそれの延長であり、より道徳的にふるまうには、他人にしてほしいことを自ら他人にすることだ」という感じですね。
もしかしたら、この記事だけを読んでも理解できないかもしれません。
だいぶ割愛して飛ばしていますからね。
もし興味が湧きましたら、ぜひ手に取って読んでみてくださいね。
私は図書館で借りましたし、知り合いの方は通信販売で買っていました。
それでは、また。