三題噺

三題噺 売れない作家の起爆剤

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おはようございます。海野豹です。年間100冊を目指して読書記録をブログに付けています。このブログの目標は「毎日1度以上本を開くこと」と「毎日1行以上更新すること」です。

 

さて、今回は三題噺に挑戦しました。本日のお題は「二股」「泣き笑い」「賞状」です。

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パチパチと渇いた拍手とライトに照らされながら、私は自分の作品を思い返していた。私は涙を流しながら笑っていた。

 

「はぁ、また駄目だったか」

溜息と共にスマートフォンを布団の上にポンと投げた。今回の新人賞への応募も連絡がないまま落選した訳だ。

私は幼い頃に夢見た小説家になる為に仕事を辞めて作家に転身した。自分でも薄々感じていたものの、やはり私には才能が無いらしい。いくつもの新人賞に応募しているものの、未だに通った作品はない。

私が(売れない)作家に集中できるのは、夫が働いて稼いでくれるおかげだ。その思いにも応える為にも何としても賞に通らなければならない。

「ただいま」

夫が帰ってきた。おかえり、と返しながらリビングに向かう。

「今日は遅かったのね」

「上司に飲みに誘われてね」

ウインドブレーカーを脱いだ夫から受け取る。汗臭い夫に抱き着く。そして私は発見してしまった。Yシャツのキスマークを。

ハッとしたものの、そこで何か言うことはなかった。問い詰めることが怖かった。私は気が付かないふりをした。夫はそのような私に気が付かず、風呂に入りに行った。

私ははやる気持ちを抑えながら、夫の荷物の中を見てみた。すると女物のピアスの片割れが出てきた。これはもう、二股をかけられたとしか思えないのではないだろうか?

「ふー」

「ごめん、少し話があるのだけど」

風呂から出てきた夫を問いただす。Yシャツのキスマークにピアス。鞄を勝手に開けた事は謝るものの、私の怒りはピークだ。

夫は浮気を認めた。そして私に離婚を申し出てきた。腹が立つ。離婚を申し込むのはこちらの方だ!

 

夫と別れてからの生活は本当に大変だった。手近なアルバイトをしながら作品を書き続けた。とにかくお金がなかった。時間もなかった。

それから私が思いついたことは、この経験を作品にすることだった。そしてそれを新人賞に応募した。するとなんと賞に通ったのだ!

泣き笑いながら私は賞状を受け取る。セレモニー会場にはかつての夫もいた。彼のおかげで私は作家として華を開くことが出来た。ありがとう。そう伝えたい。そして……やり直したい。

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今までで一番まともな形に収まった気がします。勿論、私には夫はいないので想像の部分もあります。しかしかなり自分の置かれている状態に近い作品が出来たかなと思います。私は今仕事をしていますが、それも辞めようかと考えています。作家に転身しようかとも考えています。無名でいきなり専業作家になるつもりはありませんが、フリーターのような生活になることも考えられます。

そうすることで失敗している自分を前半で描きました。後半は成功する事を祈っての想像の部分になります。現実と想像の部分が上手く混ぜられたかなと思います。

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