本日紹介する小説は「国語、数学、理科、誘拐」です。「青柳碧人」さんの作品で、文藝春秋から出版されています。
表紙がポップな絵であり、学生を対象としたお話なので、ラノベ感を感じますが、普通の小説の棚にありました。
舞台は「JSS進学塾」という塾です。そこに通う生徒が誘拐されてしまいます。塾の講師としてアルバイトをしている主人公たちが誘拐犯のクイズに挑戦して行きますが、何かおかしくて……?というあらすじです。
描き方としては、複数人いる主人公達の目線を行ったり来たりしながら描かれていきます。確かにそれぞれの思惑が分かり、感情移入しやすいのですが、若干混乱してしまいました。
目線切り替え時に誰なのかが分かるようになれば良いのに、と思いました。しかしそれを利用した描写も面白かったので、一概に悪いとは言えません。
私が一番気に入った主人公は「織田楓」でした。フシギ系の数学講師の大学1年生です。私は数学が苦手なので、ふわふわとした雰囲気で難解な数学の問題をあっさりと解いてしまう楓に憧れてしまいました。
この小説には講師たち向けにクイズが出されます。しかし全文は載っていないので、一緒に解くことはできません。そこが少し残念かなと感じました。一緒に解けたら、もっと楽しかっただろうな、と。
終わりはハッピーエンドになっています。それが私には嬉しかったです。誰も傷つかない誘拐事件でした。
私は割と勉強が出来るタイプの子でした。大学に行く為には奨学金を手に入れなきゃと頑張ったものです。
そんな私は上高田倫司という登場人物にとても共感しました。上高田のようにひねくれたりはせず、国立大学に行くほど頭もよくありませんが、気持ちがよくわかりました。
逆に、勉強が好きではない子にはあまり共感できないお話なのかもしれません。犯人の動機や心情が理解しにくいかもしれません。
でも、だからこそ手に取ってみて欲しいです。読んでみて、どう感じるのか、聞かせていただきたいです。
この小説は学生にもとっつきやすい内容で、可愛らしい挿絵もあるので手に取りやすいと思います。中学生がこの小説を読んで、勉強に興味を持ってくれたら嬉しいなと思いました。