こんにちは。海野豹です。
本日紹介する本は、絵本の「100万回生きたねこ」です。有名な絵本ですね。大人でも楽しめる絵本ということで読んでみました。私は一度この絵本を読んだ事があるのですが、中身は忘れてしまっていました。新しい気分で楽しめました。
大人になってから読むと、白いねこが登場した時点で何となく先が見えてしまう事が残念でした。子供たちの視点で読んだ方が、より楽しめると思います。
また、ねこの飼い主たちがなぜ船乗りなのか、なぜ泥棒なのかと考える事が楽しかったです。答えはないのですが、何となくわかる飼い主から予想外の飼い主まで、レパートリーが豊富でした。
ラストの絵を見ていると読んでいるこちらまで泣きたくなって来てしまいます。絵本の効果が表れているのかなと思います。今は平行してユング心理学の本を読んでいるので、この主人公のねこを心理学的に分析するとどのようになるのか、少し興味を持ちました。きっと絵本であり、子供に読ませるものとして書かれた物ですから、面白い分析結果が出ると思います。私自身にその力はありませんので、ここに書くことは出来ませんが。
「若き日のブッダ‐ゴータマ・シッダールタ」という仏教系の漫画では、人は生まれる苦しみを乗り越えて生を受けます。生まれる苦しみや母を自ら選んだ事を殆どの人は成長すると共に忘れてしまいます。それを思い出した人がブッダなのです。
さて、この絵本のねこは生まれる苦しみや悟りに辿り着けたのでしょうか。100万回生まれている間には、きっとたどり着けなかったのでしょう。悟りを開いたからこそ、最後のページにたどり着けるのでしょう。では最後の生でねこは何をしたのか?
ねこは泣きました。今まで生きた中で泣いたことがないねこが泣きました。それから、自分より好きなものが見つかりました。ねこは最後の生にして、やっと「生きた」のかもしれません。
私たち人間には過去の生の記憶はありません。ブッダのように悟りを開けば、過去の生を思い出す事もあるかもしれませんが、私にはその境地に至るだけの努力をするつもりはありません。もしかしたら、記憶がないだけで、私たちも100万回生きているかもしれません。
自分の生について考えさせられる絵本でした。
今回紹介した絵本
タイトル:100万回生きたねこ
作・絵:佐野洋子
定価:1000円
出版社:講談社
全国学校図書館協議会選定図書。中央児童福祉審議会推薦図書。