三題噺

三題噺 リアルサムライ

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こんにちは。海野豹です。年間100冊を目指して読書記録をブログに付けています。このブログの目標は「毎日1度以上本を開くこと」と「毎日1行以上更新すること」です。

 

今回は三題噺に挑戦したいと思います。本日のお題は「嵐」「酸素カプセル」「討伐」です。「嵐」を自然現象の「嵐」にするのか、ジャニーズの「嵐」にするのか、面白い所ですね。

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21XX年。飛躍的に機械が発達した時代。もはや機械にできないことは無くなり、人間が機械を作る以外に働くこともなくなった。

そんな時代に満を持して発売されたゲーム、「リアルサムライ」。科学的なハイテク技術を多分に使って実際にモンスターと戦っているかのような感覚を味わう事ができるゲームだ。日本製なのでサムライの名前がついている。さすがスーパーコンピューターを開発する国なだけはある。

そして俺はその「リアルサムライ」を体験するためにゲームショウに足を運んだわけだ。さすがに注目ゲームなだけあって、長蛇の列に長く並んでいる。やっと俺の番が回ってきた頃には日も傾き始めていた。

係員に連れられてリアルサムライとご対面する。見た目は酸素カプセルのようだ。この機械の中に横になって眠ると、どういう技術なのかゲーム世界に行くことができるらしい。脳に直接作用するそうで、目が見えない人でも楽しめるらしい。素晴らしい技術だ。

俺は早速横になって目を閉じた。暗闇が広がる。しばらく暗闇が続き、不覚にも眠くなってきたところで誰かの声が聞こえて来た。

「……もし…し。…きてくだ…いまし」

俺はうとうととしながら目を開けると、美少女が俺の顔をのぞき込んでいるところだった。

「うわっ」

「お目覚めになりましたか。よかった。道端に倒れられていたのですよ。」

少女はそういうと体を引いてベットの近くの椅子に座った。

俺は体を起こして部屋を見渡した。何の変哲もない木造の小屋で、俺が眠っていたベットとその横に看病してくれたらしい少女が座る椅子、そしてリビングテーブルに台所が付いているだけだ。俺は少女に目を戻した。

「ええっと、よくわからないけど、助けてくれたのだよな?ありがとう」

「いえいえ。この街の周りは以前平和でしたのに、最近は魔物が出るようになって物騒になってしまいました。おサムライ様も魔物にやられたのでしょう?おサムライ様が盗賊にやられる訳ないですものね!」

少女は目をキラキラとさせて俺を見つめてくる。全体的に身に覚えがないので何だか罪悪感を感じる。

「いや、そんな。俺はサムライでもないし…」

「何をおっしゃいますか!この立派な刀がその証拠ですわ!」

少女がベットの脇を指さす。目を移すと確かに刀が置いてあった。いやでも俺刀とか使ったことないのだけど、ひょっとしてこれを使って魔物と戦うのじゃないだろうな。

「これ、俺の?」

「はい!倒れられていたおサムライ様の腰にしっかりとついていました!」

そうか。やはり魔物退治からは逃れられないようだ。

「…それで、その魔物は何処にいるのかな?」

「なんと!この街を苦しめる魔物をおサムライ様が討伐してくださるのですか!?ありがたいです!魔物はここから北に行った平原にいます。良ければこのお弁当を持って行って下さいまし!」

少女は台所から小さなお弁当箱を持ってくると俺に押し付けた。とんとん拍子で俺は魔物退治に巻き込まれていく。言い出したの俺だけど。

「では、いってらっしゃいませ!」

少女がキラキラした目で見つめながら刀を押し当ててくる。そんなか。そんなに急に退治に行くのか。もっとこう、情報収集とか訓練場とかないのか。

「えっと、その魔物の特徴とかわからないかな?」

「魔物は風の魔法を使うと聞いています。町の作物が風の被害を受けているのです。おや」

小屋がカタカタと揺れ始めた。な、なんだ?

「さっそく魔物が現れたようです!おサムライ様、よろしくお願いします!」

俺は少女に小屋から押し出された。外はひどい嵐になっていた。風に飛ばされそうになる俺はお弁当箱を必死で抑えながら北の平原に向かう。というかこの嵐の中ふきっさらしの平原に行くなど自殺行為ではないのか?傘もカッパもないのだが…

風が吹きすさび、雨がたたきつけ、物があおられて飛び交う中、俺は北の平原に足を踏み込んだ。嵐に耐えながら進むと、この嵐の中平然と立つ人のシルエットが見えてきた。あまりに不自然だ。あれが魔物で違いない。そうであってくれ。そうでないと魔物に会う前に俺が死ぬ。

「おまえが町に災害をもたらしている魔物だな!?」

大声で叫んだものの、この嵐の中声は届かないだろうに、魔物(?)は反応してこちらを向いた。

「…お前はここにいるべき人間ではない」

同感。俺もそう思う。はやく家に帰りたいもん。

不思議と嵐の中、魔物に俺の声は届くようで、向こうの声もクリアに聞こえた。

「街の人たちに迷惑をかけることを止めるんだ!」

「…お前はこの時代の人間ではないだろう。最近は迷い込むものが多いが、何が起きている?」

いや、そのようなこと、俺に聞かれても分からんよ。このゲームではタイムスリップした設定になっているのか?魔法が存在する時点でタイムスリップではないよな…。

「…元の時代に帰れ。去ね」

魔物の方から殊更強い風が吹いてきた。俺の体がふわりと浮く感覚がした。そして俺は吹っ飛ばされ、次に目を開けると真っ白な天井が見えた。

プシュッという音と共に天井が開く。

「おつかれさまでした!これで体験版は終了です!」

…リアルサムライの体験が終わったようだ。俺は結局魔物を倒せなかった。ゲームオーバーのようだ。

俺はゲームショウの会場を後にしながらもやもやとした感覚を感じていた。あれは本当にゲームだったのだよな?魔法や魔物などというものは、架空の絵空事だよな…?

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以上、三題噺のリアルサムライでした!ゲーム内世界の背景である、魔物や魔法の存在は他に執筆している小説から拝借しました。この小説で魔物として現れている人物が主人公である小説を現在執筆中です。

小学生の時から毎晩寝る前に想像して作った作品です。一度完成までもっていったらどこかの賞に推敲して応募しようかと画策しております。この三題噺がちょっとしたスピンオフとなるときが来ることを願っています。

最後に確認のために読み直したら、「討伐」のキーワードを使っていませんでした。慌てて足したので、不自然でないと良いですが。

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