2億2千年前、恐竜の時代をタイムスリップしたかのように体験ができる機械が開発された。その機械の体験を発売前に行う事になった。体験のアルバイトスタッフとして俺はかかわることになった。
俺と同じスタッフの人たちと共に、真っ白な部屋に入れられた。スイッチ一つで、ここが恐竜の世界になるらしい。
「それでは体験を始めます」
その一言と同時にスイッチは入れられた。部屋の中に映像が映し出された。俺たちからは360度茶色い土が続いているように見える。どういう仕組みになっているかは知らない。数歩、歩いてみると感触まで土の感じがする。最近の技術は目覚ましいものがある。
俺たちが固まっていると、ドッドッドという小さな揺れと共に小さな恐竜が現れた。ヴェロキラプトルだ。恐竜にしては小型で小さいが肉食の恐竜だ。あっという間に囲まれてしまう。
俺たちの間に不穏な空気が流れる。肉食恐竜に囲まれてしまったが、大丈夫なのだろうか……?
「うわぁ!」
ヴェロキラプトルの一匹がスタッフの一人に襲い掛かった。しかしヴェロキラプトルはスタッフの体をすり抜ける。
そうだ、当たり前だけれどもこれは映像の分身なのだ。自分たちが危険な目に遭う事はない。
そう思って皆が安堵したとき、バーンという大きな音と共に大型肉食恐竜のティラノサウルスが現れた。
その迫力に俺たちの間から「おお…」と感嘆の声が漏れる。スタッフの一人がティラノサウルスに近づく。
ティラノサウルスは近づいてきたスタッフに歩み寄ると、頭から一口で平らげてしまった。ティラノサウルスが透けることはなく、おぞましい音と共にスタッフの一人が消えていく。
周りの空気が凍り付いた。ティラノサウルスが入ってきた方向を見ると、背景の映像が乱れていた。閉まっていたはずのドアを破壊して、この部屋にティラノサウルスが入ってきたかのようであった。
この後俺たちは阿鼻叫喚の世界を体験することになるのだが、それはまたいつかのお話。
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こんばんは、海野豹です。本日は久しぶりの三題噺でした。今日のお題は「スタッフ」「恐竜」「分身」です。書き終わってから読み直したら、「分身」のキーワードが入っていなくて焦ってしまいました。入れる予定であった場所に後から付け足しました。
私の作るお話の傾向として、落ちが暗いことが挙げられるかもしれませんね。何だか最近の作品を思い返していてそう思いました。
このお話を作るに当たって、恐竜の時代や名前を調べました。2億2千年前は恐竜が発生した時期なので、この時期にヴェロキラプトルやティラノサウルスはいないでしょうね。実際の年代を特定するまでには調べていません。ちょっと雑ですみません。
ではまた。感想などがあればコメント、SNS等で教えて下さると喜びます。