静寂が支配したホールを袖から私はちらりと見て、後悔した。
今日はピアノの発表会。
ホールにはたくさんの人が集まっていた。
私の曲を待っている。
緊張する。
左手の震えを右手で押さえる。
私は深く深呼吸をして、ステージの上に進んだ。
ホールから拍手が響いた。
私は楽譜をピアノにセットした。
再び静寂が訪れた。
私は音をひとつふたつと生み落としていった。
水の上に水滴が落ちて波紋が広がるように、私の音たちが旅立っていく。
それはまるで宇宙が創造されていくかのように、音がひとつひとつの生命体であるかのように、落ちて行く。
ただ、赴くままに、音を生んだ。
そして演奏が終わり、再び静寂が訪れた。
今度の拍手は割れんばかりに大きな音であふれた。
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本日も三題噺でした。今日のお題は「宇宙」「ピアノ」「水」です。
ピアノを軸に宇宙と水で創造性を表現できないかと試みてみました。
もう少し宇宙や水に言及してもよかったかなと思いました。
演奏者目線ではなく、観客目線で書くのも良かったかなと思います。