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小説「東京零年」静かな戦争

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本日は「赤川次郎」さんの小説「東京零年」を紹介します。

この小説のテーマは、平和な日本で繰り広げられる静かな戦争です。

国家権力との闘いを描いた小説です。

似た印象の小説として、「伊坂幸太郎」の「ゴールデンスランバー」があるかと思います。

「ゴールデンスランバー」では最初から最後まで国民側が描かれます。

しかし「東京零年」では主人公が権力側の人間となっています。

社会の権力との闘いを愉しみたい人に「東京零年」はおすすめです。

1.著者情報と本の概要

先ほど紹介したように、「東京零年」の著者は「赤川次郎」さんです。一九七六年に「幽霊列車」で第十五回オール読物推理小説新人賞を受賞されています。その後幅広い分野の小説を発表し、二〇〇五年に第九回日本ミステリー文学大賞を受賞されます。ミステリー小説を多く手掛けている方です。

この「東京零年」で第五〇回吉川英治文学賞を受賞されました。「東京零年」は二〇一二年四月から二〇一四年九月まで「すばる」で連載された小説となります。ハード版は二〇一五年八月に出版されています。

あらすじを紹介します。ある日のニュースに以前死んだはずの男が映っていました。それと時を同じくして偶然二人の男女が出会います。そこから話は過去と絡みながら展開していきます。

2.感想 生田目重治

この小説で私が一番好きなキャラクターは、生田目重治です。

このキャラクターを中心に感想をまとめたいと思います。

生田目重治は主人公ではありません。主人公である生田目健司の父親で、とても有名で偉い検事です。しかし今は検事を引退して愛人と暮らしています。

そのような生田目重治のセリフや心情と共に感想を紹介したいと思います。

2-1.権威の失墜

自分の意向が無視されたことにショックを受けていたのだ。

「東京零年」P.424 L.3

この文は、生田目重治が検察庁に命令をした際に無視されたとき心情です。

いままで自分の意向が全て通る地位にいた重治が、自らの権威を失ったことを痛感した際の描写です。

「東京零年」の中で生田目重治はどちらかというと悪役です。

それが改心するというか、理解を示し始めて主人公サイドに協力しようとした際にこの描写が現れます。

人間性を手に入れると同時に権力を失った重治の心はどこに向かうのでしょうか。

2-2.重治の思い

「日本を支えているのは、ああいう人たちなんだ。首相でも大臣でも検察官でもない。自分の仕事に誇りを持って、汗水たらして働いている人々なのだ」

「東京零年」P.463 L.14

このセリフによって重治は検察庁の人間の目を覚まさせようとします。

先ほどの地の文があった後のセリフなので、命がけです。

もしかしたら、検察庁で殺されてしまうかもしれない。

そのような状況下での重治のこのセリフは胸に響きます

私も誇りが持てる仕事を探したいなと思いました。

2-3.決意の言葉

「私の人生も、後悔ばかりでした。しかし、今日だけは後悔したくないと思います」

「東京零年」P.471 L.16

生田目重治はこのセリフの後に思い切った行動に出ます。

伏線がないわけではありませんでした。

しかし予想外の行動に、私はショックを受けました。

しばらくは主人公と共に狼狽しました。

何が起きたかは、皆さんの目で確かめて欲しいと思います。

3.まとめ

「東京零年」の舞台は現代日本です。

何か特別に未来的なものが登場するわけでもありません。

しかし今も、水面下で戦争が繰り広げられているのではないか、そのような印象を与える小説でした。

500頁と長編ですが、一見の価値ありと思います。

読んでみて下さいね。


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