心理学の勉強の一環で読んだ「<意識>とは何だろうか」を紹介します。
目次
1.著者情報と本の概要
著者は「下條信輔」さんで、認知心理学者でカリフォルニア工科大学の教授さんです。
脳と心と意識について考えて行く本です。
最後の方には、現代問題への発展もあります。
2-1.脳の来歴
この本で最も強調されるもの。
それが、脳の来歴です。
これについて本書では、次のように定義されています。
環境が突然激変したときには、過去に根ざしたこの知覚と行動の記憶の総体が「錯誤」をもたらす。同時に、環境が激変しないとき、あるいはしても適応に十分な時間を与えられたときには、錯誤の逆の「正解」、すなわち適応的な知覚あるいは行動をもたらす。これが、私の考える構図です。そして、いま述べた経緯の総体を、私はここで脳の「来歴」と呼びたいと思います。
意識とは何だろうか p.90 l.14-p.91 l.2
難しい事が書いてありますね。
この本を読んでいれば、書いてある通りなのですが、知らない人に説明するとなると難しい表現です。
例えば、会社のルールがあるとします。
そのルールは、実にコロコロと変わります。
Aというルールに適応した私でしたが、ある日Bというルールに突然変わりました(環境の激変)。
私は、頭ではBだとわかっているのですが、ついついAの対応をしてしまいます(錯誤)。
しかししばらく時間が経つと、Bというルールに慣れて、普通にBルールで生活できるようになります(正解)。
この「環境の激変→錯誤→正解」という流れを「脳の来歴」と呼ぶよ、ということです。
この本には、難しいことが、言葉を変えて書いてありますが、結論としては、脳の来歴を理解しなければ意識はわからない、ということです。
まずは、この脳の来歴を理解しましょう。
2-2.意識とは何だろうか
それでは、題名にもなっている意識についてみてみましょう。
意識は、この本では、次のように書かれています。
「意識」の定義は、どこまでいっても多角的で重層的で、濃淡を持つ連続的なものであること、そしてそれは観察する側の認知の様式で決まるということが、徐々にわかってくるのです。
意識とは何だろうか p.188 l.16-p.189 l.2
また難しい事がごちゃごちゃと書いてありますが、要するに「一筋縄ではわからんよ」ということです。
では、どうやって理解するのかというと、次の引用の方法によります。
事実、意識と無意識は似て非なるもの、ちがうのに依存し合うものです。その類似と相違をつぶさにみていく以外に、理解を深める方法があるとは思えません。
意識とは何だろうか p.194 ll.12-13
意識と無意識に分けて、意識について考えることで、意識でないものを無意識とするわけです。
この本を読めば、その無意識と意識の思考実験を細かくみることができます。
2-3.自由な行為の実現
意識の定義とつながって来る文脈の中で、より一歩踏み込んだ記述が出てきます。
それが、自由な行為についての考察です。
様々な結論に至るまでの考察が、書いてありますが、結論は、次のようになります。
「自由な行為」は、もっとも意識にのぼりにくいときに実現します。没頭し、われを忘れているときに。
意識とは何だろうか p.216 ll.4-5
この一文によって自由な行為の実現について結論していますが、少し不思議な部分に気づいたでしょうか。
自由な行為は、意識に上りにくいときに実現する……つまり無意識下で実現するのです。
自由な行為を行う時、私たちは、意識せずに行っています。
行為そのものは、意識的であったはずなのに、不思議な関係ですよね。
そのあたりの謎も本書をより読み解くことで理解が進むのかもしれません。
3.まとめ
今回の本は、なかなか難解な本でした。
私もこの記事で全てを理解できたわけではありません。
心の世界は、広くて深いですね。
皆さんも、一度手に取って読んでみて下さいね。